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『日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業』感想

中原圭介『日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業』講談社現代新書 2018年4月刊

 

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これからの日本について、少子化問題や、雇用が減っていき、賃金が増えず、自治体も窮地に陥る可能性があって、などなど悲観的な視点から述べられた本。文章もわかりやすくて内容に説得力があり、網羅的に述べられていて良い本だったと思います。少子化についても、企業の利益が伸びても賃金が上がらない現象も、世界的に起こっていることらしい。日経新聞などでもこういう論調の記事が最近とても多いですけど、こういう問題が一冊にわかりやすくまとめられていて、良い本でした。

世界各国の財政出動でお金が余りまくっていて不動産や株式市場は好景気になっている。日本も不動産の相場や株式の相場が上がっていて好景気ですよね。路線価も毎年上がってます。とはいえ賃金には反映されず、好景気を実感できる人は少ないという。都内で税理士業をしている私の実感としてもそんな感じですね。人手不足といっても「いい人がいない」レベルの人手不足って感じで。本気で婚活してない人の「いい人がいれば結婚したい」みたいな。

日本の場合はさらに少子化・高齢化・人口減少という大問題もあり、これは30年前からわかっていたことなので政策的失敗と言える、という。これからさらに税収不足や社会保障費の増大という難局を迎えるので少しずつ何とかしていかないといけない、と。もうこれは最初に75歳以上の医療費をタダとか1割とかにした人が悪いですよね。当時めちゃめちゃお金が余っていたのだろうなぁと思いますけど。そんなところに使わないで子供や若者にお金をかけていくべきだった。しかし民主主義的にもう戻せないですよね。70歳以上は医療費5割負担にしまーすとか言い出したら選挙で負けて無職になっちゃいますもんね。

あとは、産業構造の変化で、主に製造業で人がどんどん不要になっていくだろうという予測の話。いま現在も、IT系企業は他業種と比べて売上の割に社員数が少ないという話はありますよね。ソフトウェアは車と違ってコピペで0秒で増やせるから、当たればでかい。今後も、業種にもよりますけど、どんどん人員削減が進んでいくだろうという見込みがあるようです。税理士事務所なんかも、昔は10人でやっていた仕事が今は5人でできる、みたいなのはありますよね。その昔のことを私はあまり知らないですけど。たぶん将来はそれが3人でできるようになったりしていくのかな。業界内では昔は無かった相続の仕事とかが出てきたりもしているのですけど、同じ仕事数と仮定して。

社会全体の話でいうと、特に自動車産業の雇用者が減っていくのが大きな問題だと述べられています。電気自動車になると部品の数も減るみたいですし、複数のメーカーが集約・再編されたり撤退したりしていく流れが起こる可能性もあると。でも無人の自動運転が当たり前の社会になるのってあと50年かかるんじゃ…って私は思いますけど。下手したらそういう社会になる前に私が寿命で死にますよ。私が生きている間に無人バス&無人タクシーの自動運転社会になってほしい…。無人といっても現実的には遠隔操作みたいな感じで車内カメラだらけみたいな感じになるのですかね、知らないですけど。50年どころか100年無理な気もしてきますけど…大丈夫なのかな。さすがに100年あれば道路も全部造りなおしているのかな。

あとは、地方の自治体が将来やばいという話もありました。東京圏への一極集中が元凶と。人の偏りがおかしいですよね。本の中でも言われていましたけど、ほんとに企業と大学を地方へ分散させないとやばいと思います。めちゃめちゃ難しいでしょうけど…。都内はどこ行っても混んでいるし、東京オリンピックでさらに混みそうですし、これで雇用や賃金の状勢が良くないとなると少子化も納得ですよね。