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八木圭一『手がかりは一皿の中に』ネタバレ感想

八木圭一『手がかりは一皿の中に』集英社文庫 2018年6月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

(この記事はネタバレというほどのネタバレは無いかもしれません)

 

 本屋の新刊コーナーに並んでいるのを見て購入しました。「このミステリーがすごい大賞」の『一千兆円の身代金』の作者の新作らしい。『一千兆円の身代金』は前に読んだことがありましたけど、正直そんな刺さらなかったかなぁという印象でした。

さてさて。この『手がかりは一皿の中に』は、細かい設定のリアルさがとてもおもしろかったです。主人公が勤務する株式会社ワンプレートの「ワンプ」とか。ありそう感がすごかった。Retty、食べログなんかの名前が作中でしっかり出てくるのが良いですね。帝国ホテルのランデブーラウンジバーとかも。現代日本が舞台だというのがリアルにわかって、とても良い。あとは、熟成鮨とか、ワインのBYOからの投資詐欺とかもちょっとリアル感がありましたね。

なんていうか、細部が凝っている感じがあって、おもしろい小説だったと思います。姉弟の会話も笑える感じでした。注文がしっかり通ってるかどうか目の前で店員に確認されて弟がうざがるシーンとか。笑えました。

ミステリ的な意味では、犯人もトリックも特にひねりも無く普通な感じでしたが、そういう部分を楽しむ小説ではないのだろうと思います。ありそうなところをついてくる設定を楽しむ小説というか。細部のリアル感を楽しむ小説なのだろうと思います。主人公が人と一緒に過ごす楽しさを知っていくという成長物語の要素もあったみたいですけどそういう部分もさらっと描写されるだけでしたし。そういうあっさりした雰囲気も、それはそれで読みやすくて良かったと思います。