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高野和明『グレイヴディッガー』ネタバレ感想

高野和明『グレイヴディッガー』講談社文庫 2005年6月刊 

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

『ジェノサイド』の作者の小説で、前から読みたいなーと思ってた作品でした。おもしろいらしいとは聞いていて。

実際なかなかおもしろかったです。ジェノサイドほどではなかったと思いますけど。序盤からずっと命を狙われ続ける展開で、生きるか死ぬかはらはらどきどきの緊張感ある展開がずっと続いて、最後まで失速無しの物語でした。主人公を狙ってくる敵組織の実態がわからない不気味さと、警察やグレイヴディッガーも入り混じって複雑な関係になっているところがまたおもしろかったですね。だんだん物語が明かされていく感じと、最後にすべてがつながる感じも、とても良かった。完成度の高い小説だったと思います。

この小説、テレビドラマ的なファンタジー感があるなぁと、読んでいて思いました。なんていうか、リアル感の無さがとてもテレビドラマっぽいといいますか、読んでいてテレビドラマっぽい映像がすごい頭に思い浮かんでくる。例えば家の玄関の扉を開けたら追手3人と鉢合わせして、家の中に引き返して窓から逃げ切るとか。ねーーよって感じですけど。すごいテレビドラマっぽい。あとは例えば警察に掴まって手錠かけられたけど持っていた鍵で手錠を開けてそのままダッシュして逃げ切るとか。ねーーーよって感じですよね。さすがに警察無能すぎん…?っていう。白い粉落としたYoutuberと警察の追いかけっこレベルか。

主人公はなかなか好感持てました。居場所が特定されるのなんて携帯やPCのアプリしかないって感じなのにPCに疎くて思いつかないという。女医を疑うという。この辺りは作者のエンターテイメント精神がすばらしいなぁと思いました。上手いなぁと。

しかし相手(警察)を無能にすることによって状況を切り抜けていく系の展開なので、さすがにファンタジー度が強すぎるというか、テレビドラマっぽさが強すぎてきつい感じは正直ありました。リアル感がなさすぎると物語に感情移入しづらくなってしまう。『ジェノサイド』の方は話の大前提として人間を超越した赤ん坊という存在があったのでファンタジー度が強くてもまったく違和感なかったのですけど。

「相手側がミスってくれたからセーフ」みたいな物語展開なら、登場人物は全員中学生とか高校生とかでやってほしかったなぁとちょっと思いました。それならまったく違和感なかったと思います。