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『アルバトロスは羽ばたかない』ネタバレ感想

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』創元推理文庫 2017年11月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

発売されたばかりの文庫本でしたが、2010年の小説の文庫化ということみたいです。前作『七つの海を照らす星』に続いて購入し、寝る前にこつこつ一週間くらいかけて読破しました。完全に『七つの海を照らす星』の続編になっているので、先に『七つの海を照らす星』を読んでいないとだめなタイプですね。登場人物も被っていて『アルバトロスは羽ばたかない』の方では詳しい人物説明がないまま物語が進行したりしますし。

さてさて。中盤までは正直そこまで物語に夢中になれませんでした。おもしろかったですけど、寝る間を惜しんで読むほどでは…って感じで。現在の「冬の章」に対して過去偏にあたる「春の章~夏の章~秋の章」は物語的にどういう意味合いがあるのか謎でしたし。高村くんという新規キャラもめちゃめちゃ唐突感がありましたし、話にあんまり絡んでこないのも変な感じでした。

ということでネタバレで語ります。

まったく想像もしてなかったオチで、かなり衝撃度が高かったです。というか、叙述かよ!という驚きがそもそもありました。前作『七つの海を照らす星』は叙述無しの普通のミステリでしたし。男女錯誤くらいはありましたけど。ちょっとこれは予想外すぎて本当にびっくりしました。前評判無しでミステリを読むとこういう衝撃を味わえるのだなぁと思いましたね。でも叙述ですべてが納得というか、読んでいて変な感じだった部分もすべてこの叙述トリックへ到達するためのものだとわかったらすっきりできました。

春、夏、初秋、晩秋が北沢春菜視点、冬のⅠ~Ⅵが野中佳音視点。叙述トリックのパターンって本当に無数にありますよね。冬の章、これ全部佳音ちゃん視点だったのか…と思いながらすべて二度読みしてしまいました。ちょっと無理があるなぁって部分もありましたけど。最初の警察署のシーンとか、「北沢春菜です、と答えると~~」はさすがにひどいんじゃ…。でも高村くんと二人で話しているシーンは高村くん&春菜の会話のように見えつつも少しずれてるって感じになっていて、すごいうまいなぁと思いました。叙述ものは二度読みでさらに楽しめるのがお得感ありますよね。正直この『アルバトロスは羽ばたかない』は叙述トリックのために一度読みのときの楽しさを削ってる感はありましたけど、その分二度読みで楽しめました。

というか、前作『七つの海を照らす星』では作者名が作中人物のペンネームというオチになっていたり、この続編『アルバトロスは羽ばたかない』では前作の主人公&親友が逆転して親友&主人公という構図になっていたり、豪快なことをしてくる作家だなぁと思います。これは他の作品も読んでみたいですね。