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『恋と禁忌の述語論理』ネタバレ感想

井上真偽『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』講談社NOVELS 2015年1月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

これが井上真偽のデビュー作らしいですね。なぜかデビュー作だけずっと読んでいませんでした。たぶん表紙とタイトルで高校生の恋愛物語かなーなどとぼんやり考えて敬遠していたのだと思いますけど、年末年始にちょうど読む小説がなくなってしまって何か買おうと思ったときにこの小説のことを思い出して、購入しました。ちなみに吉祥寺の啓文堂書店ブックファースト、パルコブックセンターのどこにも在庫がなくって結局Amazonで注文しました。そしたら届くのが遅くて私がこの本を手にしたのは年が明けて広島のおばあちゃんちから帰ってきてからでした。Amazonって買ってから手に入るまでタイムラグがあるのが欠点ですよね。

この作者の本はこれですべての作品を読んだことになります。私が一番好きなのは『聖女の毒杯』ですけど、あれはシリーズものの2作目ですし、人におすすめするならやはり『探偵が早すぎる』です。上巻下巻ともに読みやすくておもしろくい。文章もニヤリと笑える系で。

いま一番好きな作家は誰か?と言われると私はこの井上真偽なのですけど、私がこの作者で好きなところは読んでいてとても頭を使うところです。特に『その可能性はすでに考えた』シリーズですね。パズルみたいに論理を積み上げていく感じがとてもおもしろい。文章も好きですけどね。

この『恋と禁忌の述語論理』も、めちゃめちゃ頭を使う小説でした。私はレッスン1の論理は理解できたのですけど、レッスン2の論理はまぁ何とか理解できた…って感じで、レッスン3の論理はさっぱりでした。さすがにレッスン3は理解しようとするのをあきらめてしまった。はやく最後まで読みたかったですし。それでも生徒役の主人公の感覚がとても適正で、理解しやすいところは主人公も理解できていて理解しづらいところは主人公も理解できていないって感じだったので、素直に読み進めることができました。

ネタバレで語りますけど、最後の章、完全犯罪を目論んでいたというオチはめちゃめちゃおもしろかったです。意外性もあり、納得感もあって。それまでの章の中尊寺先輩とか上苙丞とかのキャラクター設定がファンタジーすぎるのも創作というオチがついたときに納得できましたし。そのあと登場人物自体は実在でしたというオチもつきましたけど。そもそも上苙丞は『その可能性はすでに考えた』の主人公で私はそっちを先に読んでしまっていたので、えこれ作中作なの?とか思ってちょっと萎えかけたりしてしまいましたけど。やはり作品は順番通りに読んでいくべきでしたね。

あとは、中尊寺先輩や上苙丞の推理があっさり否定されて終わりという展開も読んでいて違和感がありましたけど、創作オチで納得でした。他には「動機はどうでもいい」が繰り返されていたり、いくら何でも殺人事件に巻き込まれすぎていたり。ただ、被害者が1人で犯人は協力者含めて2人という共通点については、読んでいるときはまったく気づきませんでしたね。

レッスン3をもう一度じっくり論理を考えながら読み返してみたい気もあるのですけど、正直この数式の羅列を見ると、うーーんって感じです。あまり物語の本筋に関係ない気もしますし…。

でもやっぱりめちゃめちゃおもしろい作品だったので、もっとはやく読んでおけばよかったと思いました。この作者の次回以降の作品もほんと楽しみですね。