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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』ネタバレ感想

辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』講談社文庫 2012年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

スロウハイツの神様に続いて、辻村深月の本を買ってみました。結構ボリュームがあって、毎日寝る前に少しずつ読んでいって、読み切るまで1週間くらいかかったと思います。正直言うと序盤~中盤くらいまではそこまで入り込める物語ではなかったと思います。終盤は一気読みでしたけど。

テーマが母娘関係なので、もともと男が読んでも共感しづらい物語なのだろうと思いますけど、主人公の母親の「虐待」の描写がさすがにフィクションっぽさが強く感じられて、あんまり主人公に対して共感できず…でした。地方社会の合コン描写や女性の生き方描写に対しても別世界すぎて共感できなかったですし。とはいえ最後どういうオチになるのだろう…という気持ちはありましたし、文章表現もうまくて、最後まで読めました。

終盤に真相が明かされていく展開も、終わり方もとても良かったです。最後はちょっと泣けました。伏線回収も無駄がなくて、美しい物語構成でした。最後に明かされたタイトルの意味も、31歳の誕生日のシーンがあったのにまったく気づきませんでした。母から娘への言葉がそのままタイトルにになっていたというオチは、とても良かったですね。

辻村深月、他のも読んでいきたいですね。文章表現がすごいうまい。寝る前に読んでいて「この人めちゃめちゃ文章いいなあ」って思ったシーンが2~3か所あったのですけど、今どこだったかなーとぱらぱら見返してみても思い出せない。

あと、このチエミという登場人物が本も読まない映画も見ないという人物だったわけですけど、ちょっと前にまさにそういうタイプの人と知り合って、流れでその人に小説や漫画をあげたのですけど(たしか『幸福な生活』と『3月のライオン』)、その人3月のライオンを読んだ感想が「これで終わりなの?」だったのですよね。当時何巻だったか忘れましたけどもちろん連載途中ですよ。というか感想それだけだったという。あれは本当にカルチャーショックというか、知らない世界を垣間見たって感じで新鮮な体験でした。別に、明るくて話おもしろくて美人でいい人なのですけど。

あ、文章うまいなって思ったところ、例えば、主人公の初潮のときの思い出シーン、母がタンスからポーチを持ってきたシーンですけど、「母の趣味ではない、三毛猫の絵が描かれていた。私の趣味でもなかったけど、私の趣味だと他人が誤解する程度には雰囲気がある、かわいい猫だった。」という文章、めちゃめちゃ良かったです。というかこのシーン、全部の文章が切れ味すごい。やっぱ他の作品も読んでいきたい作家ですね。