読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『ジェノサイド』ネタバレ感想

高野和明『ジェノサイド』(上下巻)角川文庫 2013年12月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

一気読みの小説と聞いて買ってみました。名前だけは知っている小説でしたが、初めて読みました。たぶんタイトルとかあらすじとかでなんとなく敬遠していたのだと思います。こうやっておすすめだと聞かなければ読むこともなかったかもしれません。しかし読んでみると、本当にめちゃめちゃおもしろかったです。続きが気になりまくって、電車の中とかで5分でも時間があったら本を開いたり、何かの待ち時間にも本を開いたり、ちょっと時間ができたら続きを読むって感じでした。こういうのは久しぶりでしたね。下巻の最後半分は昨日の深夜2時すぎまでかけて一気読みしてしまいましたし。本当にめちゃめちゃおもしろかったです。

生きるか死ぬかという展開がずっと続くので、緊張感がすごかったです。日本の古賀研人編の方もアフリカのイェーガー編の方もはらはらどきどき展開の連続で、続きどうなるんだろうというわくわく感が最初から最後までずっとありました。なかなかこんな失速なしの長編小説もめずらしいんじゃないでしょうか。視点変更型の小説でどの視点も同じくらいおもしろいというのもすごい。

登場人物のバーンズ大統領が当時のブッシュ大統領を想定して描かれているように見えて、そこはやはりどうしても「10年前の作品」って雰囲気が出てしまってました。古臭さというか。別にそれでもめちゃめちゃおもしろかったのですけど、どうせならその当時に読みたかったですね。その方がもっともっとリアル感を味わえたかもしれない。

そういえば、なんか普段ずっとミステリばかり読んでいるせいか、最後のエピローグで物語が収束に向かうとき、綺麗に着地しそうな感じが逆に不安というか、これは逆に最後にどんでん返しが待っているのではないか…?とちょっと考えてしまいました。たとえばアキリとエマの2人が日本で出会ったらすぐに人類を一気に殺し始めるオチなんじゃないかとか。ジェノサイドが始まった…!完!みたいな。全然そんなこともなく綺麗なエンディングでしたけど。別にそれで大満足な終わり方でしたけど。

でも、このアキリの存在がとってもチートなので、最後はアキリ死亡で終わるんじゃないかという思いはありましたね。読んでいてずっと。ギャレット死亡後に穴を掘って埋葬するシーンで、アキリが「楽しげな顔をしていた。初めて見る宗教的儀式に、興味津々といった面持ちだった。」と描写されてるところとか、異質な存在って感じがめちゃめちゃ出ていてすごいおもしろかった。このアキリが最後どういうオチになるんだろう…と。結果的には生存しつつ綺麗な終わり方というか、主人公たちに対して友好的で、将来の仕事も約束するみたいな、なんかとってもハッピーエンドで終わっていて、それはそれでとても良かったです。

この作者の他の小説も読んでみたくなりました。『クレイヴディッガー』とか、前から名前を聞いたことありましたし、この機会に読んでみてもいいかもしれない。でもその前に、最近いいと教えてもらった辻村深月を読んでいきたいですね。