読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

阿津川辰海『紅蓮館の殺人』ネタバレ感想

阿津川辰海『紅蓮館の殺人』講談社タイガ 2019年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

買おうとしたら本屋では売り切れで、結局Amazonで購入しました。それも取り寄せ?とかで一週間くらいかかっていたと思います。忘れたころに届いてました。最近の小説なのかなと思っていたら、いま見たら2019年9月と書いてありましたね。全然知らなかった。

最近は本屋がすべて開いていて、仕事帰りにふらっと本屋に寄って買い物したりもできるので、日常が戻ってきたなぁって感じですね。買うものが決まっていたらAmazon電子書籍でも良いのでしょうけど、Amazonはやっぱりランキングがひどいですし、お薦めの精度もまだまだ低すぎるので、リアル店舗でずらーっと並んでいるものの中から買うのが現状では最強ですね。たまに古い本が新刊コーナーで平積みにされてるのと帯でネタバレしてくるのが困るくらいで。リアル店舗並みの精度で本を選べるアプリとかサイトとかができたらそこで買うのですけど、いつかできることがあるのかなぁ。緊急事態宣言で外出自粛の期間に生まれなかったらもう生まれないんじゃ…って気もしますよね。まぁ無いなら無いでリアル店舗で買うので問題ないのですけど。そういえば緊急事態宣言の間に営業していた本屋がめちゃめちゃ混んでましたね。あの店はバブルが来てた。

ということで、紅蓮館の殺人。おもしろかったです。後半は一気読みでした。続きがめちゃめちゃ気になって、ぐいぐい読む感じでした。

序盤は、話のノリというか、ストーリー展開に違和感のようなものを感じていました。都合の良さを感じたというか。うーーんこれおもしろいのかなぁという気持ちでした。火が近づいてきているというのも全然緊張感なかったですし。そういえば館焼失まであと何時間みたいな文言が毎回ありましたけど、あれもあんまり意味なかったんじゃ…と読み終えてから思いました。

ネタバレで語りますが、後半になって、登場人物がみんな詐欺師や泥棒や探偵だったというのが判明したあとは、めちゃめちゃおもしろかったです。序盤の違和感というか変な感じのノリもなるほどな~ってなりましたし。全員が目的があって行動していたという。探偵の飛鳥井光流というキャラも、序盤は存在意義がわからないレベルでしたけど、終盤はとても良かった。このキャラが真犯人でしたオチでもないと存在意義が無いんじゃ…くらいに思ってましたけど、全然、存在意義ありましたね。

爪という殺人鬼についても、該当者がいないんじゃ…という感じでしたけど、序盤の久我島さんの反応が本当に知らない状況に驚いていたということで、うまいオチだなぁと思いました。この久我島さんが「みんなで探偵を殺しちゃいません?」みたいなことを言い出すシーンはめちゃめちゃおもしろかった。最後まで二転三転があって、意外性あってとても良かったです。

高校生探偵の主人公たちについても語られてないエピソードなどがあるっぽくて、奥行きを感じましたね。2作目3作目なのかなと思ったくらいです。

これが1作目だと思いますし、とてもおもしろかったので次の作品も期待していこうと思います。出たらまた買いたいですね。

光文社新書『炎上CMでよみとくジェンダー論』感想

瀬地山 角『炎上CMでよみとくジェンダー論』光文社新書 2020年5月刊

 

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今月出たばかりの新刊ですね。吉祥寺キラリナ7階の本屋で買いました。いつの間にか本屋はオープンしていました。キラリナ3~6階はすべて閉まっていて、7階8階のためだけにエスカレーターが動いている状況でした。薄暗い中をエスカレーターでのぼっていって不思議な感じでした。改装中のビルみたいだった。

というわけで、炎上CMについての本。私は結構Youtubeを見る方なのでCMもよく見る方なのですけど(最近はダイエット食品?とかの漫画っぽいCMが多いですね)この本で取り上げられているCMは、CMとしてではなく、話題になっていたからYoutubeで見た、というものばかりでした。まったく見たことがないものもいくつかありました。

ジェンダー論についても炎上の仕組みについても読んでいて納得感があって、読みやすくて良い本でした。仕事の合間にさらさらっと1~2日で読み切りました。取り上げられてた事例についても、これは炎上するだろうなぁという納得感のあるものばかりでした。そもそもよくこんなものを世に出したなぁという感じで。ルミネの上司に需要がどうとか言われるCMも当時Youtubeで見て素直にキモかったですし、ワンオペ育児きついけどがんばれ系のCMも普通は言わないだろう…って感じです。本当に、なぜこのCMが世に出たのか…という感じです。本の中では制作現場に女性がいないことなどが原因として推測されていましたけど。ダイバーシティに難があるのだろうなぁとは私も思います。あとはたぶんターゲット層をしぼったつもりなのだろうなというのはわかりますね。これを良いと思う人へ届け!みたいなつもりで世に出しているのだろうと思います。それに対してターゲット層以外の人がかみついてきて炎上した、みたいな。それで言うと私もあきらかにルミネからも母親応援系からもターゲット層扱いされていないでしょうし、私が何か言うのも違うのかなという気持ちはあります。実際特に何も言う気はありません。最近だと深夜ラジオで女性蔑視的な発言をしたお笑い芸人の人がYoutubetwitter転載で拡散されて炎上したというニュースもありましたけど、ああいうのもターゲット層以外の人が不快に思って叩いて、という流れですよね。もっと前だとコンビニアルバイトの人がインスタのストーリーにあげた動画がYoutube転載で拡散されてバイトテロとして炎上したというニュースもありましたね。当時の私の感覚だと、全然関係ない人たちがそこまで言うか?って感じでした。そのコンビニの店長が怒るならわかりますけど。なんかちょっと話がそれてしまいました。ターゲット層をしぼったつもりだったとしてもSNSやCMとして世に出したからには全世界の人がターゲットだという考えもあるでしょうし、間違ってないと思います。

最終章の、東大の男女比率が偏っているのは女子が東大を目指さないからというのは、この国の色々な問題が凝縮されてますよね。もっと女子が東大を目指せる社会になっていけばいいなとはすごく思いますけど、社会の色々なところが変わっていかないとそうならないのだろうなぁと思います。男が下駄をはかせてもらっている、という言い回しが本の中でありますけど、これは完全に同感です。男は人生設計とか社会へのかかわりとかそういう部分において楽をしているなぁと思います。努力だけしていればいいというか。例えば自分に男の子が生まれたとしたら東大を目指せと素直に言えると思いますけど、自分に女の子が生まれたとして東大を目指せと言えるかというと、うーん、まぁ普通に言えるでしょうけど、それは自分が都内の杉並区暮らしだからかもしれない。そもそも〇〇を目指せということ自体言わない可能性もありますけど…。

深水黎一郎『最高の盗難』ネタバレ感想

深水黎一郎『最高の盗難』河出文庫 2020年5月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

今月出たばかりの新刊ですね。とにかく新しい本を読みたくて、新刊コーナーの中から選んで買いました。『ミステリーアリーナ』の作者だな~と思って。寝る前に少しずつ読んでいって、3~4日で読み終わりました。

文章も読みやすくて良かったのですけど、正直ミステリーアリーナの方がおもしろかったかなとは思います。最高の盗難というタイトルについても、最高かなぁ…?という感じはありました。そもそも楽器の造りについて知らないのでふーんという感じだったというのがあります。バイオリンがどういう楽器なのかも、よくわからないですね。たぶん人生で触ったことないです。私の弟は子供のころバイオリンを習っていたみたいですけど私は音楽系は一切スルーでした。

バイオリンがどうやって外へ持ち出されたのかという話なのかなぁと思ったら外に持ち出されていなかったというオチは、ちょっと意外性があっておもしろかったです。タイトル的にも、盗みは完了するのだろうという気持ちで読んでいましたし。

どうもこれはシリーズものなのですかね。第1作から読んでおいた方が楽しめたかもしれないですね。こういうことは小説ではあるあるですよね。タイトルや表紙で続編とわかる小説もありますけど、続編だという情報を一切載せてない小説も普通にありますよね。読んでみて初めてわかる。続編ですと言うと売れなくなるからかな。本業界って、帯のネタバレとかもそうですけど、とにかく売れれば良いみたいなところがありますよね。ユーザー(読者)に100%で楽しんでもらおうというよりも。他の業界とは違うところだと思います。まぁ慣れてますし、全然いいのですけど。

この本の構成、ストラトヴァリウスの話とワーグナーの話と雪の中を歩く話の3つから構成されていますけど、繋がっているのかと思って、雪の中を歩く高校生はストラトヴァリウス話の探偵の若い頃なのかなとか思いながら読んでいました。ぜんぜん別物ぽかったですね。こういう構成の小説もあるのですね。

最後の話のヴァイオリンを弾くシーン、文章に迫力があって読んでいてわくわくしました。力が入るというか。緊迫感のようなものがありました。終わり方はよくわからなかったですけど、いい小説だったと思います。

最近はビジネス関係の本ばかり読んでましたので、久しぶりに小説を読めたのは、とても良かったです。色々読んでいきたいですね。