読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

辻堂ゆめ『君の思い出をください、と天使は言った』ネタバレ感想

辻堂ゆめ『君の思い出をください、と天使は言った』角川文庫 2019年8月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺キラリナ7階の本屋で購入しました。知ってる作者の本だなーと思って。最近はビジネス新書系の本ばかり読んでいたのですけど、この小説は購入して3~4日でささっと読み切ってしまいました。なかなかおもしろかったです。

普通にファンタジー要素のある作品なのかなと思いながら読んでました。小説のタイトルも章のタイトルもファンタジーっぽくて。それで騙された感があったのだと思います。

ネタバレで語りますけど、最後はハッピーエンドと言える終わり方で、とても良かったです。安心できました。悪魔だと思ったら普通の人間で、しかも彼氏でしたオチも、考えてみればわかりやすいオチだったのかもしれませんけど、まったく予想せずに読んでいたので普通に騙されました。おもしろかったです。

吉祥寺と三鷹が舞台という親近感を持てる小説だったのですけど、あまり街の風景などは関係ない物語でしたので、三鷹っぽさとか吉祥寺っぽさは特になかったですね。吉祥寺駅で待ち合わせて映画館に入って、タクシー乗り場でタクシーに乗って公園を抜けて三鷹市の方へ向かう、 のあたりはすべて風景が思い浮かびましたけど。ただ、映画館近くの落ち着いたカフェというのはどこの店のことかまったくわかりませんでした。吉祥寺でこんな風に日曜にふらっと入れるカフェがあるなら教えてほしいです。土日の吉祥寺はどこも混んでて困ってます。

帯には「泣いてしまう」と書いてありましたが(いま写真を撮るためにカバーをはずして初めて気づきましたが)、前作の『今、死ぬ夢を見ましたか』の方が泣けたかなーと思います。

でもささっと読めて、話のオチも気になって、おもしろい小説でした。どの作品も主人公に好感を持てますし、文体も読みやすいですし、好きな作家ですね。また次回作も買いたいですね。

小林由香『ジャッジメント』ネタバレ感想

小林由香『ジャッジメント双葉文庫 2018年8月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺アトレ2階のブックファーストで1ヶ月前くらいに購入していました。平積みでPOP付きで推されていたと思いましたが、1年前の作品だったのですね。まったく知らない作者の知らない小説でした。

犯罪の被害者の遺族が復讐として加害者を同じ方法で殺すことができる世界観という、なかなかファンタジーな感じの小説でした。でもこういう実験的な設定の小説って結構好きですね。極限状態で人間はどうなる?みたいな。

復讐者と犯罪者が普通に会話のキャッチボールしてるシーンが多くてそこにもファンタジーを感じましたけど、なかなか緊張感があって、各話とも一気読みに近かったです。寝る前に1~2話ずつ読みながらで、1週間かからず読み終えたと思います。

やっぱり最終話のジャッジメントが一番心に残りました。主人公?の応報監察官の人に愛着も出てきていましたし、餓死という長丁場で主人公や他の監察官の人たちのきつい心理状態に焦点が当たったところも良かったです。結局殺さなかったオチに対して多少の不満が残りながらも納得もできる物語展開になっていて、そのあたりは全体的にうまかったと思います。

読者というのは作中で言うところの匿名の意見を言う人たちの立場に近いですから、まさに復讐に対して肯定的な視点で読み続けることになるわけですけど、各話の遺族たちが悩んだ上で殺さなかったり殺し方を優しくしたり、そういうオチに対してもある程度納得できるような描写になっていたことが、とても良かったと思います。

道尾秀介『片眼の猿』ネタバレ感想

道尾秀介『片目の猿』新潮文庫 2007年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

恵比寿アトレの有隣堂で購入しました。1ヶ月くらい前に、ライブで恵比寿へ行ったときのついでに購入していました。それを今ごろになってようやく読破しました。Twitterでいつも小説を教えてもらっている人からのおすすめでした。かなり古い小説だったようです。古い小説ってそれだけでつまらなそうで敬遠してしまうのですけど、逆に、古くて生き残っている小説の方がおもしろい確率は高いのかもしれないですよね。おもしろいからこそ今も売られている、みたいな。

というわけで。最初から最後までおもしろかったです。読み始めてからは3日くらいで一気に読み切ってしまいました。この続きが読みたいからはやくベッドに入ろうという気持ちになるくらいおもしろかったです。

完全にネタバレで語ります。

能力者たちの物語なのかとずっと思いながら読んでいて、完全にだまされました。特殊能力を持つ人間が普通に存在するような世界観なのだと。これはこれでおもしろいなーと思いながらずっと読んでました。犬は顔の半分が鼻だという言葉で、完全にだまされてしまいましたね。この言葉のインパクトすごいですね。主人公も、まさか補聴器と盗聴器だけだとは思いませんでした。

アパートの住人たちがそれぞれ体に欠損を抱えているということも、まったく気づきませんでした。まぁそれは物語の本筋とは関係ないおまけみたいなオチでしたけど。トランプのカードの話もまったくわかりませんでしたね。クイーンがお爺さんで、ハート以外のキング3枚が双子で、というやつ。これについては最後の説明を見ても???でした。遠まわしすぎてわかるわけがないし、クイズとして成立していないレベルに思えますけど…。

作中で明言されていないのにずっと耳が大きい主人公と目が大きいヒロインを想像しながら読んでいたというのが、本当におもしろかったですね。こんな騙され方もあったのだなぁと。作中で明言されていないということも後から気づきました。

「片目の猿」という単語も、作中で何回か出てきていましたけど、途中まではなんでこれがタイトルになっているのだろう…って感じでした。話の内容とタイトルが合ってないんじゃないか…と。読み終わってみれば、とてもぴったりなタイトルでしたね。