読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

映画「響」感想

映画「響」公式サイト

http://www.hibiki-the-movie.jp/index.html

 

昨日の仕事帰りに渋谷のTOHOシネマで観てきました。現在の上映中の映画ランキングで2~3位くらいの評判の作品のようですね。1位はずっと「カメラを止めるな」みたいで。

ちなみに私は「響」の原作は7~8巻くらいで止まっています。文芸部の合宿で下級生の女子たちと一緒に肝試しする話あたりでさすがにネタ切れ感がものすごくって、そこから続きは買ってないです…。5巻くらいまでは本当に神だったと思います。台詞回しのクオリティが最高だった。特に、映画ではそこまで話が進みませんでしたけど、祖父江秋人と涼太郎くんが部室で会話するシーンは、最高だったと思います。こんなにつまらない小説は初めてだ、みたいな感じの会話のやつ。

映画館は、渋谷TOHOシネマで平日の夜18時20分からの回でしたけど、3分の2くらい埋まってる感じでした。満席じゃなかったのが意外でしたね。というか満席じゃない映画館に来たのなんていつ以来かな…って感じでした。前の方の席をとっていたのですけど、隣が空席で、快適に見ることができました。客層はやはり20代中心で、男女比は半々くらいだったと思います。

映画の内容は、かなり原作に忠実に作ってあって、原作のダイジェスト版って感じでした。原作をそぎ落として5巻分くらいの内容を120分に詰め込んだ、という感じでした。スピード感がありましたね。芥川賞直木賞の話が出たと思ったらもう授賞式、みたいな。そのスピード感の中でもリカちゃんの悲哀のシーンとか台詞無しで表情だけで描かれるシーンもあって、ほんとに詰め込まれた作品だったと思います。濃い映画だった。

以下ネタバレで語りますけど、原作のダイジェスト版といっても原作の中で印象に残るシーンはだいたいカバーされていた印象でした。そのあたりの取捨選択はとても上手かったと思います。良いシーンだけをしっかり抜き出したって感じで。だから満足度が高かった。特に最後がパトカーのシーンで終わったのは最高でした。やっぱり響といえばここですよね。このエピソードは本当に響という作品のらしさがめちゃめちゃ出たところだったと思います。物語展開や台詞回しが「こういうのおもしろいだろ? どや」という価値観によって決定されるのが響という作品なのですけど、この電車止めからの賠償金を本の印税が出るから大丈夫という流れは、最高におもしろかったと思います。リアリティよりおもしろさ重視という作者の主張がガンガン伝わってくる感じ。

あとは映画の感想でいうとやっぱり主役の欅坂の人が最高でしたね。めちゃめちゃ響っぽかった。というかまんま響だった。これは本当にすごかったと思います。キャラクター性というか雰囲気的にも、これ以上ない適役だったと思います。正直観る前はここまでしっかり寄せてきてるとは思ってませんでした。欅坂センターの人ってノリで出演しているのかと思ったら、完全に響として役柄を作り込んで出演していて、すごかったですね。その他のリカちゃん役の人も花井さん役の人もかなり原作に忠実で良かったと思います。 

これは続編にも期待ですね。続きの部分も映画化してほしい。

映画「コーヒーが冷めないうちに」感想

映画「コーヒーが冷めないうちに」公式サイト

http://coffee-movie.jp/

 

昨日、新宿の映画館で観てきました。夕方からの外食の用事があったので、早めに家を出て買い物でもしようと考えていたのですが、突発的に思いついて映画を観に行くことにしました。最初は「響」の方で考えていたのですけど、上映時間がちょうどいいのがこっちだったのでこっちを選びました。ちなみに上映の2時間前くらいの時点で購入したときは半分くらい座席が空いていたのですが、上映の時はほぼ満席になっていました。やはり土曜日の新宿はそうなりますよね。

最近映画館の周りの席で嫌な思い(においとかで)をすることが続いていたので、2席とってしまおうかとちょっと思ったのですが、映画1本で3,600円はさすがにコスパ的におかしいんじゃないかと思ってやめておきました。でもこの日は特に嫌なこともなく最後まで映画を観れたので良かったですね。

さてさて。内容的には、どんなジャンルの映画なのかも一切知らない状態でまったく期待せずに観に行ったわけですが、想像以上に良かったです。2回くらい号泣できました。あ、本屋で原作の本が「70万部」とか「映画化」とか書かれてプッシュされていたのは知っていました。

ネタバレで語りますけど、老夫婦の過去の会話のシーンはめちゃめちゃ泣けました。「いや全然」のところから、もうずっと泣けた。ああいう泣かせる系のシーンはだいたい素直に泣けるタイプです。あとは最後の、お母さんが過去ではなく未来のクリスマスイヴへ飛んでいたとわかるシーン、あの流れもめっちゃ泣けましたね。

正直、映画の完成度的には傑作というものではないとは思いますけど、めちゃめちゃ号泣できたので、見る価値のある最高の映画だったと思います。たぶん同じ内容で半分くらいの長さにできただろうなとは感じますけど…。

主役の人も、新谷くん役の人も、ビジュアル良かったですね。新谷くんはそもそも何をしにカフェに来ていたのがわかりませんでしたけど。過去に戻りたいわけでもなく。主役の人に最初から惚れてた設定なのかな。でもそんな理由で閉店までカフェに居座っていた設定ならキャラが崩壊してしまう…。

過去は変えられないけど未来は変えられるというテーマはおもしろかったですね。ファンタジー設定ですけど、設定の割にはファンタジー度は少なく感じました。その辺のバランスはとても良かった。

短編の連続みたいな映画でしたけど、どの話もいい終わり方で、前向きな気持ちになれる良作だったと思います。

佐藤青南『たぶん、出会わなければよかった 嘘つきな君に』ネタバレ感想

佐藤青南『たぶん、出会わなければよかった 嘘つきな君に』祥伝社文庫 2017年12月刊

 

f:id:seoma:20180919215747j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

twitterで存在を知って、広島県の本屋で新幹線に乗る前に購入しました。そして新幹線の中で一気に読破。まぁまぁおもしろかったです。

帯には「衝撃のラストに呆然」と書いてありますけど、ラストは説明というか答え合わせみたいな部分でしたので衝撃はまったくなかったですね。帯で嘘をつくのは内輪向け業界のいつものことなので私は全然いいのですけど。

前半が事件の起こるまでで、後半はその事件の裏側の説明という物語構成で、とてもわかりやすくて読みやすい小説でした。シンプルな構成で。正直私はもう一ひねりほしいなという気持ちがありましたけど…。

前半部分、事件が起こる前の日常シーンって感じでしたけど、会話文が不自然なのがちょっときつかったです。テレビドラマ口調ともまた微妙に違うファンタジーな口調の会話文でした。小説にかぎらずテレビドラマでも映画でも、会話はリアルなのが好きですね私は。テレビドラマとかのまったく親友に見えない親友同士の会話とかに対してしらけてしまうタイプです。舞台設定がファンタジーだったらワンチャン許せますけど現代日本が舞台で登場人物の会話が現代日本風じゃなかったりするとやっぱりきついですね。慣れの問題かもしれませんけど。

武蔵小杉のグランツリーとか渋谷スクランブル交差点のロクシタンカフェとか、そのままの名前で出てくるのはとても良かったです。こういうのは好きですね。

後半部分の、真相が少しずつ明かされていく感じと、他の人物の視点で別の意味が見えてくる展開は、なかなかおもしろかったです。