読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

映画「コーヒーが冷めないうちに」感想

映画「コーヒーが冷めないうちに」公式サイト

http://coffee-movie.jp/

 

昨日、新宿の映画館で観てきました。夕方からの外食の用事があったので、早めに家を出て買い物でもしようと考えていたのですが、突発的に思いついて映画を観に行くことにしました。最初は「響」の方で考えていたのですけど、上映時間がちょうどいいのがこっちだったのでこっちを選びました。ちなみに上映の2時間前くらいの時点で購入したときは半分くらい座席が空いていたのですが、上映の時はほぼ満席になっていました。やはり土曜日の新宿はそうなりますよね。

最近映画館の周りの席で嫌な思い(においとかで)をすることが続いていたので、2席とってしまおうかとちょっと思ったのですが、映画1本で3,600円はさすがにコスパ的におかしいんじゃないかと思ってやめておきました。でもこの日は特に嫌なこともなく最後まで映画を観れたので良かったですね。

さてさて。内容的には、どんなジャンルの映画なのかも一切知らない状態でまったく期待せずに観に行ったわけですが、想像以上に良かったです。2回くらい号泣できました。あ、本屋で原作の本が「70万部」とか「映画化」とか書かれてプッシュされていたのは知っていました。

ネタバレで語りますけど、老夫婦の過去の会話のシーンはめちゃめちゃ泣けました。「いや全然」のところから、もうずっと泣けた。ああいう泣かせる系のシーンはだいたい素直に泣けるタイプです。あとは最後の、お母さんが過去ではなく未来のクリスマスイヴへ飛んでいたとわかるシーン、あの流れもめっちゃ泣けましたね。

正直、映画の完成度的には傑作というものではないとは思いますけど、めちゃめちゃ号泣できたので、見る価値のある最高の映画だったと思います。たぶん同じ内容で半分くらいの長さにできただろうなとは感じますけど…。

主役の人も、新谷くん役の人も、ビジュアル良かったですね。新谷くんはそもそも何をしにカフェに来ていたのがわかりませんでしたけど。過去に戻りたいわけでもなく。主役の人に最初から惚れてた設定なのかな。でもそんな理由で閉店までカフェに居座っていた設定ならキャラが崩壊してしまう…。

過去は変えられないけど未来は変えられるというテーマはおもしろかったですね。ファンタジー設定ですけど、設定の割にはファンタジー度は少なく感じました。その辺のバランスはとても良かった。

短編の連続みたいな映画でしたけど、どの話もいい終わり方で、前向きな気持ちになれる良作だったと思います。

佐藤青南『たぶん、出会わなければよかった 嘘つきな君に』ネタバレ感想

佐藤青南『たぶん、出会わなければよかった 嘘つきな君に』祥伝社文庫 2017年12月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

twitterで存在を知って、広島県の本屋で新幹線に乗る前に購入しました。そして新幹線の中で一気に読破。まぁまぁおもしろかったです。

帯には「衝撃のラストに呆然」と書いてありますけど、ラストは説明というか答え合わせみたいな部分でしたので衝撃はまったくなかったですね。帯で嘘をつくのは内輪向け業界のいつものことなので私は全然いいのですけど。

前半が事件の起こるまでで、後半はその事件の裏側の説明という物語構成で、とてもわかりやすくて読みやすい小説でした。シンプルな構成で。正直私はもう一ひねりほしいなという気持ちがありましたけど…。

前半部分、事件が起こる前の日常シーンって感じでしたけど、会話文が不自然なのがちょっときつかったです。テレビドラマ口調ともまた微妙に違うファンタジーな口調の会話文でした。小説にかぎらずテレビドラマでも映画でも、会話はリアルなのが好きですね私は。テレビドラマとかのまったく親友に見えない親友同士の会話とかに対してしらけてしまうタイプです。舞台設定がファンタジーだったらワンチャン許せますけど現代日本が舞台で登場人物の会話が現代日本風じゃなかったりするとやっぱりきついですね。慣れの問題かもしれませんけど。

武蔵小杉のグランツリーとか渋谷スクランブル交差点のロクシタンカフェとか、そのままの名前で出てくるのはとても良かったです。こういうのは好きですね。

後半部分の、真相が少しずつ明かされていく感じと、他の人物の視点で別の意味が見えてくる展開は、なかなかおもしろかったです。

村田沙耶香『コンビニ人間』ネタバレ感想

村田沙耶香コンビニ人間』文春文庫 2018年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

名前だけは前から知っていた作品でした。芥川賞ということも聞いたことがあった気がします。帯に「芥川賞」と書いてあって本当に芥川賞の受賞作というのもめずらしいですね。だいたい釣り帯なのに。芥川賞をとった作者のまったく別の作品とか。

この作者の小説は『殺人出産』だけは読んだことがありました。10人産めば1人殺せる世界観というなかなかインパクトある小説で、よくこんなこと思いつくなぁと思いながら読みました。最後のオチが気になりましたね。誰を殺すのか。

この『コンビニ人間』はそれと比べると現代日本が舞台の、普通の世界観の小説でした。人工子宮の出てこない世界観。主人公のキャラクターの方がちょっと異常で。

主人公と白羽くんのずれた会話がめちゃめちゃおもしろかったです。この2人の会話シーンは全部おもしろかった。世界は縄文時代と同じで、世界はコンビニと同じで。でもキャラクターの異常性の中でリアリティのある描写が多かったと思います。たしかに周りの反応はこうなるだろうなーという感じの描写ばかりで。そこがとても良かったですね。世界観が正常だからこそ、主人公のキャラクターの異常性について素直に読めました。

最後のオチは正直物足りなかったですね。結局そのままコンビニ人間を続けるという。最後テキトーすぎん…?と思ってしまいました。何の解決もなく。まぁ現状で解決策なんて無いですよね。30代後半までコンビニアルバイトだけを続けてきた人間がこの先どうなるのか。私も別に落としどころなんて思いつきませんし。リアリティを深掘りしていった作品だからこそのどうしようもない投げっぱなしエンドと言えるのかもしれません。最後に就職して真人間になっても結婚しても死亡とかしても一気にファンタジーになってしまう。これまで(キャラクター性以外)リアリティをずっと追及してきて最後ファンタジーオチってことになったらそれはそれでしらけてしまうだろうと思います。とはいえ、こんな風に普通に終わられても、物足りなかったですね。

『殺人出産』『コンビニ人間』とどちらもおもしろかったですし、この作者の他の作品も読んでいこうかなと思いました。