読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

映画『グレイテスト・ショーマン』感想

映画『グレイテスト・ショーマン』公式サイト

http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/

 

めちゃめちゃ良かったです。

ラ・ラ・ランド』製作陣の新作ミュージカル映画。異様に評判が良かったので、上映期間が終わりそうな今になって、かけ込みで観てきました。

ラ・ラ・ランド』を超えたとか言われてたり、ツイッターやインスタで「もう5~6回観た」って言われてたり。「2回目観たら開始30秒で泣けた」という発言も見ましたね。そんなやばいのかーと思って、ついに観てきました。新宿のTOHOシネマズへ。5月9日に上映終了とのことだったので、本当にかけ込みで間に合った感じでした。

ちなみに私は『ラ・ラ・ランド』も映画館で観ていますが、正直あまり心に刺さりませんでした。ただ男女二人が恋愛してるだけの物語って感じでしたし、その恋愛描写もいまいち説得力を感じなかったです。性格描写的に特にいい男ともいい女とも思えず…。歌を歌うミュージカル映画というのもまったく世界観に入れなくて、えここで歌う??って感じでした。このクライマックスで歌を歌っちゃうの??っていう。なので『ラ・ラ・ランド』を超えたと言われても、私がここ数年で観たすべての映画が『ラ・ラ・ランド』を超えてますが…って感じでした。でもこの『グレイテスト・ショーマン』、ほんとにものすごく評判が良かったので、ワンチャンこれでミュージカル映画に対する苦手意識を克服できるんじゃないかと思って、これなら刺さるんじゃないかと思って、行ってきました。

で、『グレイテスト・ショーマン』、めちゃめちゃ感動してしまいました。まじでここ数年で私が観た全映画の中で一番の感動だったかもしれません。『ラ・ラ・ランド』超えたどころか『君の名は』超えたかな?っていう。3回くらい泣けました。これは本当にもう1回観たいレベルです。それでたしかに2回目観たら開始30秒で泣けそう。ほんとに。曲も名曲ばかりだったと思います。

まず、映画の中で登場人物がいきなり歌を歌いだすというミュージカル映画の欠点(?)については、サーカスの舞台の上で歌うという演出で一気に自然になっていました。歌を歌い始める→そのままサーカスの舞台の上で歌を歌うシーンにつながる、という。これは画期的だなぁと思いました。自然度がはんぱない。

ちょっとネタバレで語りますけど、物語の展開がはやいのも、とても良かったですね。子供時代からすぐ大人に飛んで、すぐ子供が生まれて、すぐ仕事をクビになって、すぐサーカスを始めて、すぐ成功して、ここまで開始15分くらいですかね、このサーカスの最初の成功シーンで家族で喜ぶところ、まず泣けましたね。ここでハッピーエンドでもいいんじゃと思いました。この映画は展開がはやくていいなぁと思いながら観てました。

一番泣けたのは、最後の、海沿いの土地にテントで再開しようと決めてみんなでThis is meを歌いながら行進するシーン、そのままサーカスの舞台シーンへつながって、エンディングへという流れ。あそこが一番泣けました。上流階級を目指して成功と失敗を経験して、最後はサーカス団の家族たちと街外れのテント興行に落ち着くという。落ち着くところに落ち着いた感じで、これで良い、これで十分だという満足感にあふれる、とても綺麗なエンディングだったと思います。

曲がほんとにどれも良くって、いまYoutubeで検索して公式のThis is meとかをひたすら聴いています。名曲すぎる。これカラオケで歌いたいな~。

くろきすがや『感染領域』ネタバレ感想

くろきすがや『感染領域』宝島社文庫 2018年2月刊

 

f:id:seoma:20180502141015j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

発売されたころに本屋の新刊コーナーで見て、買おうかなーと思っていた本。たぶんそのときは読んでいた本があったので買わなかったのですよね。ようやく購入しました。

「このミステリーがすごい」のシリーズはけっこう読んできているのですけど、おもしろい本多いと思います。今までこのシリーズを読んてきた中でおもしろかったのは、『愚者のスプーンは曲がる』『神の値段』『女王はかえらない』とかですね。まだ読んでいない作品も多いので、これからそのあたりを読んでいってもいいかもしれない。

この『感染領域』という小説、正直めちゃめちゃおもしろいってほどではなかったのですけど、2日くらいで一気に読み切ってしまいました。残り3分の2くらいで昨晩0時くらいから読み始めて、なかなか眠れなかったので、3時までかかって読破してしまったという。たまーにあります、こういう眠れない日が。だいたい次の日めっちゃ眠れるので問題は無いのですけど。

読みやすくて続きが気になって読んでしまうという感じでしたので、良い小説だったと思います。作中で死人が出たあたりで一気に物語が盛り上がりました。主人公の影を背負ってる感じも好感もてましたし。ただ、物語の根幹部分のトマトの話がいまいち納得できないというか、植物のエイズウィルスが空気感染して世界中の植物が枯れてしまう危機と言われても、えーそんなことある…?みたいな。まぁフィクションだとはわかっていますけども。

主人公の顔が、ずっとイケメン理系研究者って感じの色白の男子を想像しながら読んでいたのですけど、後半で彫りが深くて体がでかいと作中で明かされて、ちょっとおもしろかったです。それもまた納得感があって。こういうの小説というエンターテイメントのおもしろいところですね。モモちゃんも最初女性っぽく登場して数ページ後にオカマと明かされるという。

あと、割とどうでもいいのですけど、作中の台詞回しとかの描写がとっても古いというか年配者っぽくて、作者デビュー作なのに何歳なのだろう…と思っていたら、帯に1965年生まれ&1963年生まれの2人組と書いてありました。まさにそういう感じの文章でしたので、この世代の人たちの方がもっと共感できて楽しめるのかもしれないですね。

多島斗志之『黒百合』ネタバレ感想

多島斗志之『黒百合』創元推理文庫 2015年8月刊

 

f:id:seoma:20180422102133j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterでおすすめの小説をいくつか教えてもらったうちの一つ。なかなか自分で小説を見つけていくのも限界がありますので、こういうのはとてもありがたいですね。寝る前に少しずつ読んで、1週間くらいかけて読破しました。ミステリではないのかなーと思いながら読んでいったのですけど、最後まで読んだらめちゃめちゃミステリでしたね。

子供3人の話とその親たちの話が順番に語られていくという物語構成で、ちょっとわかりづらさを感じながら読み進めてました。2つの時代の話がどう繋がるのがいまいちわからなかった。途中で、親が親を殺したというような関係なのかと思って、そのあたりが後半で物語に絡んでくるのかと思いましたが…。

 

もうこれはネタバレ全開で語ります。

何となく叙述トリック系の小説っぽい感じで紹介されていたので少し覚悟しつつ読んでいたはずなのですけど、相田真千子→日登美さんの相手→一彦の母親という流れは完全に予想外でした。かなり衝撃でした。でもこれですべてがつながった感じがあって、めちゃめちゃおもしろかったです。そのまま最初から2周目を読んでしまった。

登場人物の人間関係がとても複雑ですよね。時系列的には、香の父親(倉沢貴久男)と黒ユリお千(相田真千子)が恋仲になるが相田真千子がドイツへ行かされている間に倉沢貴久男は結婚、(香は別の女性との間の子供)、相田真千子はそのあと倉沢日登美と恋仲になり、そのことを倉沢貴久男に問い詰められて倉沢貴久男を殺害、相田真千子はそのあと一彦の父親(浅木謙太郎)と再会し結婚という流れですよね。複雑ですけど、この人とこの人が実はイコールで…と、パズルみたいでおもしろいですね。たぶん年表も書けますね、これ。

昭和10年(1935年) ドイツで浅木謙太郎30歳、寺元さん32歳、相田真千子20歳(19歳)が出会う。寺元さんに長男(進の兄)が生まれる。

昭和11年(1936年) 香の兄(正妻の子)が生まれる。

昭和13年(1938年) 進、一彦、香(愛人の子)が生まれる。この年に、浅木謙太郎・相田真千子が東京で再会。

昭和15年~昭和20年(1940年~1945年) 倉沢日登美と相田真千子が恋仲に。

昭和20年(1945年) 相田真千子、倉沢貴久男を殺害。

昭和21年(1946年) 一彦が相田真千子と初めて会う。浅木謙太郎と相田真千子が結婚。

昭和27年(1952年) 14歳の進、一彦、香が仲良く夏休みを過ごす。相田真千子、倉沢貴代司を殺害。

という流れでしょうか。黒百合というタイトルもそうですけど、相田真千子が物語の中心にいたということですね。

あと、最後の「ちょっと上目づかいで写っている私」という文章で、主人公の進くんがいきなり女の子に思えてきて、あれ??って思いながら最初から確認してしまいました。もしかしてこっちも…?みたいな。わざわざ「寺元さんに長男が生まれた」という文章があって一見するとこれが進くんのように見えるけど2年ずれているから進くんに作中で語られていない兄がいてこれは兄のことだったという構造になっているのも、とても引っかけっぽいです。でも作中で「ボーイフレンドをふたり従えて」と言われたり、進くんの文章で「少年の私たちよりは~」とあったり、絵も「2人の少年」と言われたり、男の子っぽいですね? 一緒に池で泳いだ描写もありましたし。うーん。相田真千子の写真が「青年の写真」「美青年」と表現されたり、女同士の恋愛が普通にあり得る世界観ではありますけど…。少なくても地の文章などで進くんが「男子」や「次男」と明言されている箇所はなかったわけですが…。