読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『武道館』ネタバレ感想

朝井リョウ『武道館』文藝春秋 2015年4月

 

f:id:seoma:20180123193750j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

武道館といえばアイドル、アイドルといえば武道館、これほどアイドルの小説にふさわしいタイトルも無いと思います。でも作中で武道館が本来の武道の目的でもしっかり使われているという配慮(?)もありましたね。全体的に読みやすい文体で、話のテンポも良く、昨晩だけで一気に読み切ってしまいました。寝る前の0時くらいから読み始めて、読み終わったときは2時半~3時くらいになっていたと思います。この作者の小説は『何者』だけ読んだことがありますけど、ストーリーも文体もおもしろくって、一気読みだった記憶があります。あれも心をえぐる系の話でしたけど、この『武道館』もなかなか心をえぐってくるエモい小説でした。あと、『何者』でも思いましたけど、リアル感がすごいですね。ファンタジー設定の中での、居そうな感じ、ありそうな感じがすごいうまい。中盤くらいの大地くんのソフトクリームの話とか、何を言っているのかわからない感じ、拙い説明になってしまう感じ、そういうところにとても男子高校生っぽいリアルさを感じました。

この「NEXT YOU」という架空のアイドルグループも、ありそうな感じでしっかり作られていてすごいなと思いました。ありそうなというか、現実の色々なアイドルグループで実際ある話を組み合わせているというか。それぞれのメンバーのキャラ設定だけじゃなくて、曲の設定や口上まで考えられていて、架空のアイドルをここまで作りこんだのはすごいなぁと思います。そこから、卒業、炎上、スキャンダル、握手券商法、ブレイクまでの過程、そして武道館と、ものすごく盛り込まれていて、話がどんどん進んでいってテンポが良かったですね。エンターテイメントって感じでした。

ネタバレで語りますけど、中盤~終盤くらいの「これからは、俺一人だけに送ってこいよ」のシーンは泣けました。この大地くんがいい人すぎて、めちゃめちゃ良かったですね。あとは終盤の、るりかちゃん(やはりるりかという名前は最年少メンバーのものなのか)のシーン、アイドルだから一線引いて友達も作らないとか、それでいて人気は負けているとか、心をえぐってきますね。でも「ぼちドル様」という単語はおもしろかった。こういうオリジナル単語がものすごくそれっぽいのがほんとにこの作者のすごいところだと思います。

 あとは、アイドルは偶像でもあり人間でもあるという作者の考え方がとても健全で好感を持てました。真っ向から「恋愛禁止」を否定するわけでもなく。人間として、自分で人生を選択していく、主体性を持った存在だという位置づけ。それでありながら主人公の愛子は高校生なのに中学生くらいの素朴さ・純粋さを持ったキャラ設定であるところがまたバランスのいい小説だと思います。

『アルバトロスは羽ばたかない』ネタバレ感想

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』創元推理文庫 2017年11月刊

 

f:id:seoma:20180121231701j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

発売されたばかりの文庫本でしたが、2010年の小説の文庫化ということみたいです。前作『七つの海を照らす星』に続いて購入し、寝る前にこつこつ一週間くらいかけて読破しました。完全に『七つの海を照らす星』の続編になっているので、先に『七つの海を照らす星』を読んでいないとだめなタイプですね。登場人物も被っていて『アルバトロスは羽ばたかない』の方では詳しい人物説明がないまま物語が進行したりしますし。

さてさて。中盤までは正直そこまで物語に夢中になれませんでした。おもしろかったですけど、寝る間を惜しんで読むほどでは…って感じで。現在の「冬の章」に対して過去偏にあたる「春の章~夏の章~秋の章」は物語的にどういう意味合いがあるのか謎でしたし。高村くんという新規キャラもめちゃめちゃ唐突感がありましたし、話にあんまり絡んでこないのも変な感じでした。

ということでネタバレで語ります。

まったく想像もしてなかったオチで、かなり衝撃度が高かったです。というか、叙述かよ!という驚きがそもそもありました。前作『七つの海を照らす星』は叙述無しの普通のミステリでしたし。男女錯誤くらいはありましたけど。ちょっとこれは予想外すぎて本当にびっくりしました。前評判無しでミステリを読むとこういう衝撃を味わえるのだなぁと思いましたね。でも叙述ですべてが納得というか、読んでいて変な感じだった部分もすべてこの叙述トリックへ到達するためのものだとわかったらすっきりできました。

春、夏、初秋、晩秋が北沢春菜視点、冬のⅠ~Ⅵが野中佳音視点。叙述トリックのパターンって本当に無数にありますよね。冬の章、これ全部佳音ちゃん視点だったのか…と思いながらすべて二度読みしてしまいました。ちょっと無理があるなぁって部分もありましたけど。最初の警察署のシーンとか、「北沢春菜です、と答えると~~」はさすがにひどいんじゃ…。でも高村くんと二人で話しているシーンは高村くん&春菜の会話のように見えつつも少しずれてるって感じになっていて、すごいうまいなぁと思いました。叙述ものは二度読みでさらに楽しめるのがお得感ありますよね。正直この『アルバトロスは羽ばたかない』は叙述トリックのために一度読みのときの楽しさを削ってる感はありましたけど、その分二度読みで楽しめました。

というか、前作『七つの海を照らす星』では作者名が作中人物のペンネームというオチになっていたり、この続編『アルバトロスは羽ばたかない』では前作の主人公&親友が逆転して親友&主人公という構図になっていたり、豪快なことをしてくる作家だなぁと思います。これは他の作品も読んでみたいですね。

映画『勝手にふるえてろ』感想

映画『勝手にふるえてろ』公式サイト

http://furuetero-movie.com/

 

渋谷ヒューマントラストシネマで観てきました。ちょうど水曜日でサービスデーだったせいか満席になっていたようで、びっくりしました。私がチケットを購入したのは当日の昼休みのとき(13時ごろ)で、その時点では真ん中の方の座席だけ(全体の4分の1くらい)が埋まってる感じでした。もしサービスデーのせいで満席になっていたのだとすると、他の空いている曜日に1,800円払って観に行った方が快適で満足度は高かったかもしれません。ちなみに19時10分上映開始の回で、私はのんびり19時00分くらいに映画館に到着したのですけど、スクリーン入場待ちの人たちでフロアが大混雑状態でした。ほぼ20代~30代って感じで、男女比は4対6か3対7くらいで女子の方が多く、半分以上が1人で観に来てる感じでした。

映画の内容は、めちゃめちゃ満足度高かったです。ほんと観に行ってよかった。24歳彼氏なしの主人公には共感とかはできなかったのですけど、台詞回しのセンスのおもしろさと、主人公の松岡茉優の演技がめちゃめちゃ良くって、最初から最後まで笑える名作でした。物語のテンポも良くて、2時間あっという間でした。共感はできなかったですけど主人公に対する好感度はすごい高かったですね。喫茶店や駅や釣り人の人たちとの会話が脳内会話なのは観ててわかるような演出になっていましたけど、途中の物語展開で会社の隣の女子との会話まで脳内なのかな…?とちょっと思わせてくるところはおもしろかったです。友達いないキャラの割には普通に仲良く話せてるし。あと、経理職の主人公が工場職みたいなユニフォーム姿だったり昼寝の時間?があったり、ファンタジーぽかった。

一と二について。どっちも性格に難があるというか、特に二の方、絶妙にうざいところをついてくるキャラ設定がとても良かったです。悪い人じゃないんだけど面倒くさい、みたいな。ちょっとリアル感あるうざさでしたし、これは付き合いたくないなぁという絶妙なキャラ設定だと思いました。でもビジュアルはめちゃめちゃかっこよかったですね、一も二も。公式サイトの監督発言にもありましたけど、二の人の手が綺麗でした。最後の玄関のシーン、手が綺麗だなーと観てて思いました。まぁそれはいいとして。

原作は未読だったのですけど、この作者の小説は、『インストール』と『蹴りたい背中』は読んだことがあります。文章がにやりと笑える系でめちゃめちゃ好きでした。この『勝手にふるえてろ』でも、主人公が早口でべらべら話すシーンなんか、とても文章センスを感じました。これはきっと原作小説で読んでもおもしろいのだろうな~と思いました。

正直、ここまでおもしろい映画だと思いませんでした。当日の昼休みに、明日の仕事が午後からだから帰り遅くなってもいいし映画でも観て帰るかーと思い立って「渋谷 映画」とかで上映中の作品を検索した中で時間帯が合った作品がこれだったという感じなのですけど。主人公も、一の人も二の人も、というかみんな演技がうまくて、安定して観ていられました。会社の隣の席の女子の人も演技うまかったですね。スティーブジョブスのマネージャーのブログが~~みたいなシーンすごい笑えました。